HACCP 7原則12手順
中小企業・個人事業主のための 儲かるHACCP への道しるべ
食品衛生法が改定されて、すべての食品事業者にHACCP導入が義務化しました。
みなさんの食品事業所では、どんなHACCPを導入していますか? ・・・儲かるHACCPになっていますか?
※以下の記事は、食品製造従事者50人未満の食品製造事業所でのHACCPについて記述しています。
前の記事:儲かるHACCP
「HACCPの考え方を衛生管理のための手引書」だけでいいの?
食品製造従事者50人未満の食品製造事業所なら、「HACCPの考え方を衛生管理のための手引書」に従って衛生管理計画をつくればよいことになっています。
でも、正式なHACCPの「7原則12手順」をちょっとだけでも知っていると、「HACCPの考え方を衛生管理のための手引書」がとても読みやすくなります。だまされたと思って、少しお付き合いください。
Codex-HACCPの7原則12手順
【手順1】HACCPチームの編成
【手順2】製品についての記述 ・・・ どんな食品ですか?
【手順3】意図する使用方法の特定 ・・・ だれがいつ食べますか?
【手順4】フローダイアグラム(製造工程一覧図)の作成
【手順5】フローダイアグラムの現場確認
【手順6[原則1]】危害要因分析(HA)の実施
【手順7[原則2]】重要管理点(CCP)の決定
【手順8[原則3]】管理基準(CL)の設定
【手順9[原則4]】モニタリング方法の設定
【手順10[原則5]】改善措置方法の設定
【手順11[原則6]】検証方法の設定
【手順12[原則7]】文書化と記録の維持管理
これだけでは「何のことか?」といわれてしまうので、1ステップずつ説明します。
ちょっと長くなってしまいますが、「これなんだろう?」ていうところを中心に眺めていただければいいかな。
忘れてはいけないことは、以下の説明は従業員が50人以上いる大きな食品工場の場合を想定しています。
手順1: HACCPチームを編成する
HACCPチームの選任は、経営者の責任で行ってください。
通常の製品製造などの業務に加えて、HACCPチームとして業務を行うための作業時間と必要な機材(デスクやパソコン環境など)を整備してください。
HACCPの衛生管理は、製品の品目ごとに確立してゆくので、HACCPチームも製品の品目ごとに選任します。
その品目の食品衛生責任者は必ずメンバーにしてください。
また、できるだけ多くの職員に参加してもらい、経験を活かすために毎回半数を入れ替えます。
チームリーダーも交代しながら、多くの職員に担当してもらいましょう。
HACCPチームは、毎週1回決まった曜日時間に開催します。
例えば、毎週水曜日の製造後清掃の終了後から1時間などのように定例化して決めてください。
HACCPチームに選任されていない職員には同じ時間内に、QCサークルをしてもらうのも良い考えです。
社員1名あたり月の業務が会議のために4時間ずつ増えます。また、会議の準備のために不定期に資料作成の作業が発生します。
日常業務を見直して効率化することも併せて実施して、残業が増えないように計画してください。
このように手間をかけて、社員ひとりひとりの自覚的な取り組みが行われることで、結果として、不良品や事故品の発生率を大きく低減できます。
社長は、HACCPチームに参加できないことが多くあっても、チームリーダーから逐次HACCPチームでの進捗状況について報告を受け、HACCPチームの進捗状況をきちんと把握してください。
最初のHACCPチームは、一番生産量が多い主力製品について担当します。
メンバーは任命された7日後に第1回のHACCPチーム会議を開催します。
第1回HACCPチーム会議
第1回HACCPチーム会議は、任命されたメンバー全員が集合し、次のように行います。
(1) 任命式: 社長から名前を呼ばれ、役割を任命される。自己紹介をする。
チームリーダー: とりまとめと議事進行
総務庶務メンバー: 書記
衛生管理責任者: PP(一般衛生管理)の確認
営業販売メンバー: 製品説明書の提案
原料購買メンバー: 製品説明書の最終確認、奇数番号のCCPについて記録表案の提案
製造メンバー1: 製造工程図の提案、奇数番号のCCPについてのHACCPプランの提案
出荷配送メンバー: 製造工程図の最終確認、偶数番号のCCPについて記録表案の提案
製造メンバー2: 危害要因リストの提案、偶数番号のCCPについてのHACCPプランの提案
品質管理メンバー: 事故クレームの一覧表作成、危害要因リストの最終確認
(2) テキスト配布: 本書とテキスト類を受け取る。
(3) 資料配布: 現状の管理運営要領・製品の規格書・標準作業書・製造現場で使用する帳票類のコピーを受け取る。
(4) 今後の日程確認
(5) 次回までの課題確認(提出日は、次回HACCPチーム会議の2日前)
営業販売メンバー: 製品説明書の提案
(6) 会議の記録は、書記が作成し、チームリーダーが確認後、メンバーに配信する。
手順2: 食品の説明・記述(安定性、賞味期限、包装、流通形態)
手順3: 製品の使用方法を確認する
手順3: 製品の使用方法を確認する
営業販売メンバーは、製造説明書の原案を作成し、第2回HACCPチーム会議の2日前までに提案する。
既に製品仕様書がある場合は、それをそのまま用いてもよいが、HACCPの検討に必要な項目が全て記述してあることを確認する。
第2回HACCPチーム会議
メンバーは、会議の2日前に提出された「製品説明書」案の内容を確認して、会議に臨み、次のように進む。
(1) 営業販売メンバーが、「製品説明書」案を提案説明する。
(2) メンバーは自由に「製品説明書」の内容・形式について、質問・意見する。
(3) 原料購買メンバーが、討議内容を受けて、次回会議の2日前までに「製品説明書」の完成版を作成する。
(4) 次回までの課題確認(提出日は、次回HACCPチーム会議の2日前)
食品衛生責任者: テキスト④一般衛生管理基準(PP)の確認
これは1人でするのは過大なので、複数人がサポートしてください。
(5) 会議の記録は、書記が作成し、チームリーダーが確認後、メンバーに配信する。
第3回HACCPチーム会議 一般衛生管理基準(PP)の確認
メンバーは、会議の2日前に提出されたテキスト④一般衛生管理基準(PP)の確認報告をみて会議に臨み、次のように進む。
(1) 次の一般衛生管理基準チェックリストをメンバー全員で、確認する。
(2) 次回までの課題確認(提出日は、次回HACCPチーム会議の2日前)
製造メンバー1: 製造工程図の提案
(3) 会議の記録は、書記が作成し、チームリーダーが確認後、メンバーに配信する。
参考資料:【厚生労働省】食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針 (2014年10月14日)
手順4: 製造工程図(フローチャート)の作成
営業販売メンバーは、製造説明書の原案を作成し、第2回HACCPチーム会議の2日前までに提案する。
既に製造工程図がある場合は、それを基にして作成する。
装置機械を使用するときは、その装置機械の名称を記入する。
加熱や冷却では、その方法・温度条件や操作時間を記入する。
仕掛品として保管があるときは、保管場所の温度と、標準的な保管時間と最大保管時間を記入する。
工程中での再利用(何かの余りを原料として前の段階に戻すこと)にも、再利用率を付して矢印を記入する。
金属探知機やX線検査機、ウエイトチェッカーは、その作動条件を記入する。
洗浄等に利用する水が上水でないときは、使用水の種類(例えば、地下水)を記入する。
第4回HACCPチーム会議
メンバーは、会議の2日前に提出された「製造工程図」案の内容を確認して、会議に臨み、次のように進む。
(1) 製造メンバー1が、「製造工程図」案を提案説明する。
(2) メンバーは自由に「製造工程図」の内容・形式について、質問・意見する。
(3) 出荷配送メンバーが、討議内容を受けて、次回会議の2日前までに「製造工程図」の完成版を作成する。
(4) 会議の記録は、書記が作成し、チームリーダーが確認後、メンバーに配信する。
第5回HACCPチーム会議
手順5: 製造工程図の現場での検証
手順5: 製造工程図の現場での検証
メンバーは、会議の2日前に提出された「製造工程図」を確認して、製造工場入口に集合する。
(1) メンバーは、作業着に着替えて、作業人の入場手順に従って、製造現場に立ち入る。
(2) 「製造工程図」の順番に沿って、次のことを確認しながら製造場所を巡回する。
メンバー毎に確認ポイントを予め分担しておくとよい。
・製造工程図に、抜けや欠落もしくは余分な工程がないかどうか。
・製造工程図に、記載されている様々な温度条件や操作時間が、現場のレシピと一致しているかどうか。
・製造工程図に、記載されていない材料の再利用はないか。
(3) 製造場所での検証が終了したら、会議室に移動して、発見した相違点と修正方法を共有する。
(4) 出荷配送メンバーが、検証内容を受けて、次回会議の2日前までに「製造工程図」の最終版を作成する。
(5) 製造メンバー2が、製造工程図を基に、次回会議の2日前までに「危害要因リスト」案を提案する。
(6) 品質管理メンバーが、当該製品と類似品について、直近3年分の事故クレーム一覧表を作成する。
(7) 会議の記録は、書記が作成し、チームリーダーが確認後、メンバーに配信する。
手順6:(原則1) 危害要因を分析(HA)する
製造メンバー2が、製造工程図を基に、次回会議の2日前までに「危害要因リスト」案を提案する。
第6回HACCPチーム会議
メンバーは、会議の2日前に提出された「危害要因リスト」案の内容を確認して、会議に臨み、次のように進む。
(1) 製造メンバー2が、「危害要因リスト」案を提案説明する。
(2) メンバーは自由に「危害要因リスト」の内容・形式について、質問・意見する。
(3) 品質管理メンバーが、討議内容を受けて、次回会議の2日前までに「危害要因リスト」案2を完成する。
このとき、直近3年分の事故クレーム一覧表の内容も、関連する工程のハザードとして記載する。
(4) 会議の記録は、書記が作成し、チームリーダーが確認後、メンバーに配信する。
第7回HACCPチーム会議
手順7:(原則2) 重要管理点(CCP)を設定する
手順7:(原則2) 重要管理点(CCP)を設定する
メンバーは、会議の2日前に提出された「危害要因リスト」案2の内容を確認して、会議に臨み、次のように進む。
(1) 品質管理メンバーが、「危害要因リスト」案2に、
直近3年分と過去の重大事故のハザードが漏れなく盛り込まれていることを説明する。
(2) メンバーは自由に「危害要因リスト」の内容・形式について、質問・意見する。
(3) 事故クレーム一覧に現れた全ての課題に対して、対応策があることを確認する。
(4) 全員討議を経て、CCPを決める。
(5) 製造メンバー1は、次回会議の2日前までに奇数番号の「HACCPプラン」案を完成する。
(6) 製造メンバー2は、次回会議の2日前までに偶数番号の「HACCPプラン」案を完成する。
(7) 会議の記録は、書記が作成し、チームリーダーが確認後、メンバーに配信する。
HACCPプランの作成
手順8:(原則3) 許容限界(クリティカルリミット; CL)を確立する
手順9:(原則4) CCP の測定(モニタリング)方法を確立する
手順10:(原則5) 許容限界から逸脱があった場合の是正措置を確立する
手順11:(原則6) 検証方法の手段を確立する
手順12:(原則7) 記録をつけ、文書化を行い、それを保管するシステムを確立する
手順8:(原則3) 許容限界(クリティカルリミット; CL)を確立する
手順9:(原則4) CCP の測定(モニタリング)方法を確立する
手順10:(原則5) 許容限界から逸脱があった場合の是正措置を確立する
手順11:(原則6) 検証方法の手段を確立する
手順12:(原則7) 記録をつけ、文書化を行い、それを保管するシステムを確立する
第8回HACCPチーム会議
メンバーは、会議の2日前に提出された「HACCPプラン」案の内容を確認して、会議に臨み、次のように進む。
(1) 製造メンバーが、「HACCPプラン」案を説明する。
(2) メンバーは自由に「HACCPプラン」の内容・形式について、質問・意見する。
(3) 製造メンバーは、次回会議の2日前までに「HACCPプラン」を完成する。
(4) 原料購買メンバーは、次回会議の2日前までに奇数番号のCCPについて記録表案を提案する。
出荷配送メンバーは、次回会議の2日前までに偶数番号のCCPについて記録表案を提案する。
(5) 会議の記録は、書記が作成し、チームリーダーが確認後、メンバーに配信する。
※CCPが多くて、全てのHACCPプランを討議できない場合は、第8回HACCPチーム会議を繰り返します。
第9回HACCPチーム会議
メンバーは、会議の2日前に提出された「記録表」案の内容を確認して、会議に臨み、次のように進む。
(1) 原料購買メンバーは、奇数番号のCCPについて記録表案を説明する。
出荷配送メンバーは、偶数番号のCCPについて記録表案を説明する。
(2) メンバーは自由に「記録表」案の内容・形式について、質問・意見する。
(3) 原料購買メンバーと出荷配送メンバーは、次回会議の2日前までに「記録表」を完成する。
(4) 会議の記録は、書記が作成し、チームリーダーが確認後、メンバーに配信する。
※CCPが多くて、全ての記録表を討議できない場合は、第9回HACCPチーム会議を繰り返します。
記録表の例
第10回HACCPチーム会議
チームリーダーは、当該製品にかかる規格書・標準作業手順書・製品説明書・製造工程図・危害要因リスト・HACCPプラン・製造指示書・製造記録書・モニタリング記録書などを揃えて、メンバーに示します。
(1) メンバーは自由に、これらの文書間に相互に矛盾がないかを点検し、質問・意見する。
(2) チームリーダーは、修正が必要な箇所を確認して、印をつけ、修正作業を担当するものを決める。
(3) 会議の記録は、書記が作成し、チームリーダーが確認後、メンバーに配信する。
第11回HACCPチーム会議
チームリーダーは、当該製品にかかる修正された規格書・標準作業手順書・製品説明書・製造工程図・危害要因リスト・HACCPプラン・製造指示書・製造記録書・モニタリング記録書などを揃えて、メンバーに示します。
(1) メンバーは自由に、これらの文書間に相互に矛盾がないことを点検し、確認する。
(2) 会議の記録は、書記が作成し、チームリーダーが確認後、メンバーに配信する。
(3) HACCPを実施するための準備が整ったことを、作業従事者に告知します。
(4) 会議後、個別に作業従事者が、それぞれの現場での作業内容の変更を了解したかを確認します。
HACCP実施開始集会
(1) 当該製品の製造にかかる製造メンバーの全員に集合してもらいます。
(2) 経営者から、HACCPチームの努力をねぎらい、明日からHACCPによる衛生管理を始めることを宣言します。
(3) HACCPチームリーダーは、簡単にCCPとその管理について説明します。
(4) 製造メンバーからの質問があれば、質疑応答します。
HACCP実施開始
当該製品の製造でHACCPによる衛生管理を始めます。
第12回HACCPチーム会議
(1) メンバーは、作業着に着替えて、作業人の入場手順に従って、製造現場に立ち入る。
(2) 「製造工程図」の順番に沿って、次のことを確認しながら製造場所を巡回する。
(3) 当初の予定通りにHACCPが運用できていることを確認する。
もし、不具合や現場からの改善要望があれば、記録する。
(4) 製造場所での検証が終了したら、会議室に移動して、修正方法を共有する。
(5) チームリーダーが修正項目ごとに修正担当者を任命して、期限を定めて修正を依頼する。
修正文書は、チームリーダーと製造責任者、工場長の決済を受けて、即日実施される。
(6) 会議の記録は、書記が作成し、チームリーダーが確認後、メンバーに配信する。
あなたの次の一手
このページで記述したCODEX-7原則12手順によるHACCPは、食品製造従事者50人以上の事業所では必須です。
しかし、食品衛生法では従事者50人未満の小規模事業所では「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」でよいことになっています。
それでも、槌田は小規模事業所であっても、CODEX-7原則12手順によるHACCPの導入をお奨めしています。
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